初めて出会った時、彼女は歌っていた。 人の溢れる室内でさえ、様々な雑音や歌声に混ざって、彼女ひとりの声が耳まで届い てくる。決して大きな声ではなかった。しかし、和音を構成する一部である、主旋律で もないアルトの歌声だけが、はっきりと聞こえた。